治療選択 3つのポイントは 「ステージ」「がん細胞のタイプ」「患者さんの状態」

最終更新日:
この記事をSNSでシェアする

膀胱がんの治療方針を決めるために必要な要素は3つあります。

1.ステージ(病期)
膀胱がんの進行度(がんの深さ、広がり)
2.がん細胞のタイプ
膀胱がんの種類や悪性度
3.患者さんの状態
年齢、全身の状態など

納得した上で膀胱がんの治療に取り組むには、3つの要素によってどのように治療方針が決められるのかを理解しておくことが大切です。

がんの進行段階を示す「ステージ」

ステージは日本語では「病期」または「進行期」と呼ばれ、がんの進行段階を表します。がんは進行とともに広がっていく性質があるので、その広がりの度合いによってステージ(病期・進行期)が定義されています。
膀胱がんのステージは、ステージ0期からⅣ期までの5段階に分類されていて、数字が大きいほど、がんが進行していることを示しています。

1) 各ステージを分類する「3つの因子」とは?

膀胱がんのステージに使われるのは「TNM分類」です。「TNM分類」は、T因子、N因子、M因子の3つで分類が行われます。それぞれの因子の意味は次の通りです。

T因子:
がんの深さ、広がり方
N因子:
リンパ節転移
M因子:
ほかの臓器への転移
T因子(がんの深さ、広がり方)
T因子(がんの深さ、広がり方)の図
N因子(リンパ節転移)
N因子(ほかの臓器への転移)

2) 5段階のステージは3つの因子で定義されている

膀胱がんの治療選択の基本となる「膀胱癌診療ガイドライン」では、第7版のTNM分類が使用されています。
このコンテンツは一部ステージ別になっていますが、第7版のTNM分類にもとづいて制作してあります。

TNM分類(第7版)

(参考)
TNM分類(第7版)は2016年に改訂され、TNM分類(第8版)が発表されました。さらに2018年にはアップデータ版に改訂されています。資料によっては第8版のステージ分類が掲載されていることもあるので、第8版の内容も以下に掲載します。

TNM分類(第8版)

第7版との違いについて(かなり細かい情報ですが念のため記入します)
1.Ⅲ期とⅣ期を「亜分類」によって細かく分類した。その結果、Ⅲ期はⅢAとⅢBに、Ⅳ期はⅣAとⅣBに分かれた。
2.第7版ではⅣ期に分類されていたものの一部が、第8版ではⅢ期に分類された
3.M因子のうちM1を分割。M1a(遠隔リンパ節転移)とM1b(他臓器転移)に分けられた。

3) 「筋層」への浸潤があるか、他臓器への転移があるかで治療方針は大きく変わる

膀胱がんの治療は、膀胱がんが「筋層」に浸潤(しんじゅん)しているかどうかで、方針が異なります。そのため、筋層に浸潤がないステージ0期とⅠ期は「筋層非浸潤性膀胱がん」、筋層に浸潤があるⅡ期とⅢ期は「筋層浸潤性膀胱がん」と別の名称で呼ぶことで、両者を区別しています。ちなみに浸潤とは、がん細胞が正常細胞の間に広がっている状態を表す言葉です。

膀胱がんが進行して、膀胱以外の臓器に転移があるⅣ期は「転移性膀胱がん」と呼ばれます。「転移性膀胱がん」は、「筋層非浸潤性膀胱がん」や「筋層浸潤性膀胱がん」とは異なる方針で治療が行われます。

4) ステージは「TURBT」で決まる

膀胱がんの治療は、ステージによって大きく異なります。そのステージを決定するにはT因子、N因子、M因子の情報が必要です。

このうちT因子は、腫瘍を切除する「TURBT」を行い、切除した組織を詳しく調べることで決まります。「TURBT」は入院して行うため、患者さんには負担がかかります。しかし、正確にステージ分類を行い、その方に最適な治療を行うためには不可欠な検査なのです。そのほかにも、TURBTには「治療」としての役割もあります。詳しくは「7-7 リスクの判定後どのような治療が行われる?」をご覧ください。

なお、「TURBT」の精度を高めるために、新たに「光力学診断」という方法も行われています。「光力学診断」については「2-2の4)「光力学診断」で、診断と治療の精度がアップ!」をご覧ください。

がんの「タイプ」によって、治療法は異なる

膀胱がんのタイプは、「組織型」と「異型度」で分類されます。どちらもTURBTによって切除された組織を「病理組織診断」で詳しく調べることで明らかになります。

1) 組織型

「TURBT」で採取された組織を顕微鏡で観察し、細胞や組織の形状の特徴からいくつかの種類に分類します。これが「組織型」です。わかりやすく説明すると、そのがんの”顔つき”と言えます。

膀胱がんでは9割以上が「尿路上皮がん」です。そのため、このコンテンツでは「尿路上皮がん」について説明します。「尿路上皮がん」のほかにも「扁平上皮がん(5%程度)」「腺がん(1%以下)」「小細胞がん(ごく少数)」などの組織型があります。

2) 異型度

異型度とは、正常細胞と比べたときに、細胞の形がどれほど異なっているかを示す指標です。膀胱がんでは「low-grade(低異型度)」と「high-grade(高異型度)」の2つに分けられています。「high-grade(高異型度)」の方が、異型度が高い(形が大きく異なっている)ことを示します。異型度が高いほど、がんとしての悪性度も高いため、「high-grade」のがん細胞は「low-grade」よりも広がるスピードが速く、治療が難しいという特徴があります。

以前は、異型度が「G1」、「G2」、「G3」の3段階に分けられていました。G3が最も異型度が高く、悪性度も高いことを示します。現在でも「G1」、「G2」、「G3」という分類が、「high-grade」「low-grade」と併記される場合があります。

全身の状態も考慮して治療法が選択される

以膀胱がんの治療選択は、患者さんの「ステージ」や「がんのタイプ」だけでなく、患者さんの全身の状態も考慮した上で決定されます。
例えば、ステージや組織型の情報からは「手術可能」と判断される患者さんでも、全身の状態が悪ければ手術を行わず、「放射線療法」や「薬物療法」に切り替える場合があります。

監修医師

堀江 重郎 Shigeo Horie

順天堂大学大学院泌尿器外科学 主任教授
順天堂大学附属順天堂医院 泌尿器科長
専門分野:泌尿器がん(前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌)の手術・薬物治療、男性更年期障害、性機能障害、性腺機能低下症、LOH症候群

専門医・認定医:
日本泌尿器科学会指導医、日本腎臓学会指導医、日本癌治療学会暫定教育医、日本内視鏡外科学会腹腔鏡技術認定医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


北村 香介 Kousuke Kitamura

順天堂大学附属練間病院 泌尿器科 准教授
専門分野:泌尿器悪性腫瘍、ロボット手術、腹腔鏡手術、尿路性器感染症

専門医・認定医:
日本泌尿器科学会 認定専門医、日本泌尿器科学会 指導医、日本泌尿器内視鏡学会 腹腔鏡手術認定医、日本がん治療認定医機構 専門医、ロボット外科学会 国内A級認定、ロボット外科学会 国際B級認定、インテュイティブサージカル da Vinci Certificate

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


家田 健史 Takeshi Ieda

東京臨海病院 泌尿器科
専門分野:膀胱腫瘍・尿路感染症

専門医・認定医:
日本泌尿器学会専門医・指導医 日本がん治療学会認定医、Certificate of Da Vinci System Training、ぼうこう又は直腸障害の診断指定医、ICDインフェクションコントロールドクター認定、内分泌代謝科(泌尿器科)専門医、医学博士

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。

膀胱がんTOPへ戻る
この記事をSNSでシェアする