転移性膀胱がん(ステージⅣ期)
治療の中心は化学療法

最終更新日:
この記事をSNSでシェアする

転移性膀胱がん(ステージⅣ期)は、膀胱以外の臓器やリンパ節に転移がある状態です。
転移性膀胱がんの中でも、がんが広がっている範囲が骨盤内に限られている場合は「局所進展」と呼びます。一方、骨盤の外までがんが広がっている場合を「遠隔転移」と呼びます。局所進展と遠隔転移の場合、どちらも治療の中心は化学療法ですが、その進め方には違いがあります。

局所進展では化学療法の後に膀胱全摘除術を行う場合もある

膀胱がんが広がっている範囲が骨盤内に限られている「局所進展」の場合、化学療法の結果次第で、その後の治療が変わることがあります。
具体的には、化学療法を行って、膀胱がんが消える、またはサイズが縮小したときには、膀胱全摘除術を行う場合があります。

その理由は、第1に、化学療法によって効果が得られた場合、その後、再発が起きることがあるのですが、再発する場所は、もともとがんが発生した場所であることが多いとわかっているからです。第2の理由は、化学療法で効果が得られた患者さんに対して膀胱全摘除術を行った場合、膀胱全摘除術を行わなかった場合と比べると、長期生存をする方が多いという報告があるからです。

ただし、化学療法の効果が得られたすべての患者さんに対して、膀胱全摘除術を行えるわけではありません。また、膀胱全摘除術を行ったとしても、すべての患者さんの生存期間が伸びるというわけではありません。

加えて、膀胱全摘除術は切除する範囲が広いため、体に与えるダメージが大きい手術です。さらに膀胱を摘出するため、尿を運ぶ尿路が切断されることになります。そのため、尿路変更術と呼ばれる手術も合わせて行う必要があります。尿路変更術を行うと、排尿の方法が大きく変わります。このような点も含めて、治療の選択をする必要があります。
尿路変更術の詳しい情報は「3つの尿路変更術の詳細」をご覧ください。

遠隔転移の場合

骨盤の外側にある臓器(肝臓、肺、骨、副腎など)やリンパ節に膀胱がんが転移する「遠隔転移」がある場合、がん細胞が増えることを抑えるために化学療法を行います。治療の目的は完治を目指すことではなく、QOL(生活の質)の維持を目指すことになります。

場合によっては、遠隔転移したがんを取り除くため手術を行う場合もあります。手術を検討する条件は、「遠隔転移した場所が1箇所だけで、完全に切除することが可能」「化学療法が効果を発揮した場合」などです。特に、肺のみに遠隔転移がある場合は、手術を行うことで長期生存が得られる可能性があるという報告があります。
ほかにも、患者さんの状態によっては、BSC(Best Supportive Care)が行われる場合があります。

●BSCとは?

BSCは、”Best Supportive Care”の略語です。BSCでは手術療法、放射線療法、薬物療法などの積極的な治療は行わず、痛みの緩和や、QOL(生活の質)の維持・向上を目指します。
BSCには様々なケアが含まれていますが、その1つが痛みのコントロールです。膀胱がんの痛みのコントロールには様々な方法があります。詳しい情報は「膀胱がんによる痛みは改善できる」をご覧ください。

転移性膀胱がんに対して行われる「化学療法」

2種類の「細胞障害性抗がん剤」を併用します。2剤を併用することで、1剤だけの場合よりも治療効果が高いことが実証されています。

実際に行われるのは、「ゲムシタビン」と「シスプラチン」を合わせた「GC療法」です。
ただし、シスプラチンは腎臓に対する副作用があるため、腎臓機能が低下している患者さんには使用できません。そのため、シスプラチンよりも腎臓に与えるダメージが少ない「カルボプラチン」と「ゲムシタビン」を組み合わせて使用する場合があります。

なお、化学療法を行って効果が見られない場合、免疫チェックポイント阻害薬の「キイトルーダ」を投与する場合があります。キイトルーダの情報は「転移性膀胱がんの場合」をご覧ください。

1) 投与方法

① GC療法(ゲムシタビン+シスプラチン)

どちらも点滴で投与します。基本的に入院して行います。
投与のスケジュールは4週間を1コースとして、複数コース実施します。1コースの間にゲムシタビンは3回(1日目、8日目、15日目)、シスプラチンは1回(2日目)に投与します。その後16日目から28日目までは投薬を行いません。

GC療法(ゲムシタビン+シスプラチン)の投与のスケジュール

② 「カルボプラチン」と「ゲムシタビン」

どちらも点滴で投与します。投与は外来で行う場合もあります。
投与のスケジュールはGC療法と同じです。

2) 副作用

食欲不振、吐き気・嘔吐、脱毛、発疹、貧血、白血球減少、血小板減少、間質性肺炎など

3) 化学療法で起こる吐き気は、コントロールできる!

化学療法に関して、副作用が強いのではと不安に思う方もいるかもしれません。しかし最近では、吐き気や嘔吐に関しては、「制吐剤(せいとざい)」と呼ばれる吐き気止めの薬を使うことで、かなり軽減されました。

吐き気には、抗がん剤点滴後24時間以内に発生する「急性」、24時間以降に発生する「遅延性」、以前に嘔吐した経験が原因となって心理的に生じる「予期性」などがあります。こうした3つのタイプの吐き気に対応するため3種類の薬が用意されています。 制吐剤は予め予防的に投与されますが、それでも吐き気が強い場合は、頓用のお薬(症状が強い時に服用する薬)を使用することや、次の化学療法から予防的に投与される薬を追加・変更することが可能です。副作用が強い場合には医師や看護師、薬剤師などに伝えるようにしましょう。

症状の緩和のために行われる「放射線療法」

転移性膀胱がんの患者さんに行う放射線療法の目的は、症状を緩和することです。血尿がある場合、止血のために膀胱に放射線を照射することがあります。また、骨への転移が起こった場合、骨に放射線を照射することで痛みを緩和します。

監修医師

堀江 重郎 Shigeo Horie

順天堂大学大学院泌尿器外科学 主任教授
順天堂大学附属順天堂医院 泌尿器科長
専門分野:泌尿器がん(前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌)の手術・薬物治療、男性更年期障害、性機能障害、性腺機能低下症、LOH症候群

専門医・認定医:
日本泌尿器科学会指導医、日本腎臓学会指導医、日本癌治療学会暫定教育医、日本内視鏡外科学会腹腔鏡技術認定医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


北村 香介 Kousuke Kitamura

順天堂大学附属練間病院 泌尿器科 准教授
専門分野:泌尿器悪性腫瘍、ロボット手術、腹腔鏡手術、尿路性器感染症

専門医・認定医:
日本泌尿器科学会 認定専門医、日本泌尿器科学会 指導医、日本泌尿器内視鏡学会 腹腔鏡手術認定医、日本がん治療認定医機構 専門医、ロボット外科学会 国内A級認定、ロボット外科学会 国際B級認定、インテュイティブサージカル da Vinci Certificate

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


家田 健史 Takeshi Ieda

東京臨海病院 泌尿器科
専門分野:膀胱腫瘍・尿路感染症

専門医・認定医:
日本泌尿器学会専門医・指導医 日本がん治療学会認定医、Certificate of Da Vinci System Training、ぼうこう又は直腸障害の診断指定医、ICDインフェクションコントロールドクター認定、内分泌代謝科(泌尿器科)専門医、医学博士

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。

膀胱がんTOPへ戻る
この記事をSNSでシェアする