低侵襲手術 「腹腔鏡下手術」と「ロボット支援下手術」の違いは?

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筋層浸潤性膀胱がんの患者さんに行われる膀胱全摘除術は、「開腹手術」と「低侵襲(ていしんしゅう)手術」に分けられます。このうち、患者さんの体に与えるダメージが少ない低侵襲手術には、「腹腔鏡下手術」と「ロボット支援下手術」の2種類があります。それぞれ、どのような違いがあるのでしょうか?

「腹腔鏡下手術」と「ロボット支援下手術」の画像

腹腔鏡下手術

「腹腔鏡下手術」は「内視鏡手術」と呼ばれることもあります。「開腹手術」では、お腹を大きく切開しますが、腹腔鏡下手術では5mm~12mmの穴を4~5ヶ所開けるだけです。そのため、患者さんの体への負担は小さくなります。

開けた穴にはポートと呼ばれる器具を挿入。その後、ポートの1つから腹腔鏡を挿入します。腹腔鏡にはカメラがついていて、お腹の中の様子をモニターで見ることができます。
残りのポートからは、鉗子(かんし)と呼ばれる器具を挿入します。鉗子の先端には、はさみ、電気メス、ピンセットなどが付いています。モニターを見ながら、鉗子を操作することで手術を進めていきます。

ロボット支援下手術(ダヴィンチ手術)

「ロボット支援下手術」は、ロボットが自動的に進める手術ではありません。あくまでも、手術を行うのは医師で、ロボットの役割は医師が行う手術を「支援すること」です。そのため「ロボット支援下手術」という名前がつけられています。

「ロボット支援下手術」で使用されるのは、医療用ロボット「ダヴィンチ(da Vinci)」です。医師は、ダヴィンチンのコントローラーを操作して、ロボットアームの先に装着された器具を思い通りに動かしながら手術を進めます。
「ロボット支援下手術」は、従来の腹腔鏡下手術と比べると、より正確で細かい手術が可能であるという特徴があります。

「開腹手術」と「低侵襲手術」
メリットとデメリットは?

開腹手術と低侵襲手術を比べると、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

「開腹手術」と「低侵襲手術」 メリットとデメリットは?

「開腹手術」と低侵襲手術の一つである「ロボット支援下手術」を比較すると、「ロボット支援下手術」の方が、手術中の出血量が少なく、入院期間も短いという結果が出ています。入院期間が短いのは、術後の回復が早く、手術による合併症も少ないからです。
その一方で、手術時間や治療成績には差がありません。

「開腹手術」と「ロボット支援下手術」の出血量と入院期間の比較

出典:順天堂医院の手術成績

低侵襲手術「ロボット支援下手術」
その特徴は?

ロボット支援下手術で使用される医療用ロボットダヴィンチは、「サージョンコンソール」「ペイシェントコンソール」「ビジョンカート」の3つの装置で構成されています。
手術を担当する執刀医は、サージョンコンソールに着席してコントローラーを操作します。すると、執刀医の操作通りにペイシャントカートのロボットアームが動きます。ロボットアームの先には鉗子が装着されているので、執刀医は意図通りに鉗子を動かすことができます。

ビジョンカートには、執刀医が見ているのと同じ映像が映し出されます。この画像を見ることで、手術スタッフも手術のプロセスを確認できます。

1) ダヴィンチの構成

2) ロボットアームで手術を進めるため正確な手術が可能に

ロボットアームには、人の手とは違って“手ぶれ”がありません。また、人の手よりも、細かく正確な動きが可能です。そのため、従来の腹腔鏡下手術と比べると、より正確な手術を行えます。

3) 「関節」があるため自由度が高い手術が可能に

従来の「腹腔鏡下手術」で使われる鉗子は、細長い棒状の器具です。そのためお腹の内で鉗子の先を動かす際に、動かせる範囲には制限がありました。

一方、ダヴィンチのロボットアームに取り付けられる鉗子には「関節」がついているので、角度を変えたり、回転させたりすることができます。そのため、狭い腹腔内でも、これまでよりも自由な方向や角度から手術を行えるようになりました。

腹腔鏡下手術とロボット支援下手術のアーム比較

4) 医師は、開腹手術に近い感覚で手術を行える

従来の「腹腔鏡下手術」では、医師は通常のモニターに映し出された患部の映像を見ながら手術を進めていました。一方ダヴィンチのモニターでは、患部の映像は3次元化されています。そのため、医師はより開腹手術に近い感覚で手術を進めることができます。

膀胱がんの「ロボット支援下手術」には2つの進め方がある

筋層浸潤性膀胱がんの手術療法では、「膀胱全摘除術」の後に「尿路変更術」を行います。この尿路変更術もロボット支援下で行う場合と、尿路変更術は開腹手術に切り替えて行う場合があります。前者を「体腔内尿路変更(ICUD)」、後者を「体腔外尿路変更(ECUD)」と呼びます。

筋層浸潤性膀胱がんの手術療法では、「膀胱全摘除術」の後に「尿路変更術」を行う

「体腔内尿路変更(ICUD)」は、体の中で尿路変更術を行うため、従来の「体腔外尿路変更(ECUD)」と比べると術後の回復は早くなり、合併症も少なくなるメリットがあります。

「体腔内尿路変更(ICUD)」と「体腔外尿路変更(ECUD)」の比較

出典:Analysis of Intracorporeal Compared with Extracorporeal Urinary Diversion After Robot-assisted Radical Cystectomy: Results from the International Robotic Cystectomy Consortium.European Urology Volume 65, Issue 2, February 2014, Pages 340-347

監修医師

堀江 重郎 Shigeo Horie

順天堂大学大学院泌尿器外科学 主任教授
順天堂大学附属順天堂医院 泌尿器科長
専門分野:泌尿器がん(前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌)の手術・薬物治療、男性更年期障害、性機能障害、性腺機能低下症、LOH症候群

専門医・認定医:
日本泌尿器科学会指導医、日本腎臓学会指導医、日本癌治療学会暫定教育医、日本内視鏡外科学会腹腔鏡技術認定医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


北村 香介 Kousuke Kitamura

順天堂大学附属練間病院 泌尿器科 准教授
専門分野:泌尿器悪性腫瘍、ロボット手術、腹腔鏡手術、尿路性器感染症

専門医・認定医:
日本泌尿器科学会 認定専門医、日本泌尿器科学会 指導医、日本泌尿器内視鏡学会 腹腔鏡手術認定医、日本がん治療認定医機構 専門医、ロボット外科学会 国内A級認定、ロボット外科学会 国際B級認定、インテュイティブサージカル da Vinci Certificate

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


家田 健史 Takeshi Ieda

東京臨海病院 泌尿器科
専門分野:膀胱腫瘍・尿路感染症

専門医・認定医:
日本泌尿器学会専門医・指導医 日本がん治療学会認定医、Certificate of Da Vinci System Training、ぼうこう又は直腸障害の診断指定医、ICDインフェクションコントロールドクター認定、内分泌代謝科(泌尿器科)専門医、医学博士

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。

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