がん専門医師のセカンドオピニオンも

食道がんの治療法

最終更新日:
この記事をSNSでシェアする

食道がんはどうやって治療するの?

食道がん治療

食道がん治療 治療の3本柱

食道がんのおもな治療は、手術治療(内視鏡的治療〔ESD〕と外科手術)、化学療法(抗がん剤治療)と放射線治療の3本柱です。
食道がんの治療では、それぞれの領域の専門家が集まり、すべての患者さんについてカンファレンスを行い、患者さんにとって最良の治療法を検討し、患者さんに提示します。最も根治性の高い治療を目指し、患者さんの希望や治療後のQOLも含めて総合的に判断し、患者さんと治療法を決めます。

食道がんのステージと治療法

内視鏡的治療 リンパ節転移がなく浅いがん

内視鏡を使ってがんを切除します。内視鏡的治療には内視鏡的粘膜切除術 (EMR)内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD)があります。EMRは粘膜層を切除する方法で、ESDは粘膜下層に薬液を注入し、病変を電気メスで徐々に剥ぎ取る方法です。ESDは範囲の広い病変でも一括切除できます。

リンパ節転移がない表在型食道がんの一部が内視鏡的治療の適応となります。食道がんの深さが粘膜下層までにとどまるがん表在型食道がんと呼びます。T1a(Mがん)とT1b(SMがん)です。

表在型食道がんはがんの浸潤の深さで下図のように6段階に分けられます。浅いT1a-EPまたはT1a-LPMまでのがんではリンパ節転移がほとんどないため、内視鏡治療のよい適応となります。T1a-MMとT1b-SM1ではリンパ節転移の頻度は0~15%です。この深さでは、診断的な内視鏡治療を行い、病理結果によって手術や化学放射線療法を追加するかを決定することもあります。それよりも深いT1b-SM2、SM3の病変ではリンパ節転移は15~40%程度に認められることから、外科的切除の適応です。

表在型食道がんの浸潤度

日本食道学会「臨床・病理 食道がん取り扱い規約(第10版補改訂)」より引用

手術 リンパ節転移が認められる深いがん

1)ステージ0/Ⅰ

内視鏡的治療の適応とならないときや、内視鏡的治療で根治切除に至らなかった場合は、化学療法や放射線治療なしで手術を行います。

2)ステージⅡ/Ⅲ

手術の前に化学療法(抗がん剤)や放射線療法、これらを組み合わせた治療によって、がんを小さくしてから手術を行うことで、より高い治療効果が得られるとされ、現在、標準的な療法となっています。

標準的な外科手術

食道がんに対して、頸部・胸部・腹部の3領域に及ぶリンパ節郭清を行い、食道を切除する方法が標準的な手術です。

食道がん手術は侵襲が大きいため、個々の患者さんの年齢やリスクを考慮し、手術をするか否か、リンパ節郭清範囲、再建方法など、治療法を選択します。

食道がんの患者さんには、呼吸機能に問題がある方や、多くの既往症があり、リスクが高い方、80歳以上のご高齢の方もいます。患者さんの状態によっては、侵襲を軽減する手術や2期分割手術などの体に優しい手術を行うこともあります。

手術で治ってさらによく生きる

手術の成績が向上した際に、その次に重要となるのは患者さんの長期のQOLです。食道がんになっても、「手術で治る」時代から「手術で治って、さらによく生きる」時代へと変化してきています。

患者さんに手術治療を薦めるときには、術後のQOLを重視する目的から、傷の小さな鏡視下手術や再建法にも工夫を加えて、食道がんが治った後もできるだけよい生活を過ごしていただけるように考える病院が増えています。

手術内容

胸部操作(食道切除と縦隔リンパ節郭清)

開胸手術と鏡視下手術

おもに2つの手術方法があります。開胸手術鏡視下手術胸腔鏡下手術もしくは手術支援ロボット:ダヴィンチを用いた手術)です。

従来、食道がんに対する手術は、胸を開いてがんを切除(開胸手術)し、お腹を開けて胃を用いて再建する手術(開腹手術)が行われてきました。現在は鏡視下手術(胸腔鏡下食道切除術・腹腔鏡下再建術)が積極的に行われています。

1)胸腔鏡下食道切除術

手術器具を入れる5mm~1cm程度のポート筒)を5~6個用いて手術を行います。従来の大きく胸を切って開ける手術と比べて傷が小さく、痛みも少ない手術が可能です。

内視鏡(カメラ)によってより拡大された鮮細な画像により、より安全に病巣の切除とリンパ節郭清ができるようになりました。

2)手術支援ロボット(ダヴィンチ)を用いた胸腔鏡下食道切除術

自然な奥行き感が得られる、3Dによる立体的な画像のもとに手術ができます。手ブレ防止機能や思い通りに曲がる多関節鉗子を用いて、胸腔内で複雑で細やかな手術手技が可能です。

2018年に食道がんに対するロボット支援下手術が保険適用となり、年間100例以上が行われるようになっています。今後もロボット支援下食道切除術は増加する見込みです。

2) 手術支援ロボット(ダヴィンチ)

腹部操作(腹部リンパ節郭清と胃上部切除、再建臓器の作成)

開腹手術と鏡視下手術

おもに2つの手術方法があります。開腹手術鏡視下手術(完全腹腔鏡下手術もしくは用手補助腹腔鏡手術(HALS:hand assisted laparoscopic surgery)が行われています。

1) 腹腔鏡下消化管再建術 他の臓器で食道を再建する

お腹を大きく開けずにポート(手術器具を入れる筒)を用いて手術を行います。5~10mmのポートを5つ用いて手術を行い、上腹部で約4~5cm切開し、食道の代わりとなる再建臓器を作成します。

消化管再建術

2) 胃挙上再建術 胃で食道を再建する

食道切除後の再建には、胃を用いた胃挙上再建が標準的な再建法です。胃を食道のように細く管状に作り替えるため、胃が胸の中に位置するようになります。血流が豊富で、簡便性、確実性の観点から選択されることが多い手術です。
胃がん術後などで胃が再建に使用できない場合には、大腸や小腸を用いて食道を再建します。

胃を用いることによる変化

胃の貯留能、消化力が落ちるので、術後の食生活が変化します。術後の食生活に対するアドバイスを行います。

逆流による誤嚥性肺炎の危険

胃挙上再建術では、食道と胃の間にあった逆流防止機構の「噴門」が手術で切除されているので、再建された挙上胃内の液体は、何かの拍子にのどまで逆流することがあります。寝ている間に起こると、時によってのどがうまく処理できず、逆流液の一部が気管の中に落ち込んでしまう可能性があります。
食道がん術後の方を長く悩ませる問題に、この逆流による肺炎があります。手術を受けた患者さんが高齢になると、誤嚥性肺炎の危険が増します。
※このような欠点を補うために、結腸を用いる手術もあります

3)胃温存回結腸挙上再建術 結腸で食道を再建する

胃挙上再建術の欠点を補うために、大腸の一部である結腸を用いる手術です。前述のとおり、胃がんや胃切除後で胃が使用できない場合に大腸や小腸を使用しますが、胃が使用できる場合でも、貯留能温存や逆流防止のために、機能温存として、胃温存回結腸再建術が行われます。さらに縫合不全のリスクも減らすことができます。ただ、手間がかかり、手術侵襲がやや大きくなり、手術時間が延びる、術後に下痢を起こしやすいという欠点もあります。

化学療法 手術の前に行う

ステージⅡ/Ⅲの食道がんでは、手術の前に化学療法(抗がん剤)で、がんを小さくしてから手術を行います。おもにシスプラチンと5-FUの2種類の抗がん剤(FP療法)を2コース投与する方法が標準治療です。シスプラチン、5-FU、ドセタキセルの3種類の抗がん剤(DCF療法)を2~3コース投与してから手術を行う場合があります。

放射線療法
根治的化学放射線療法(+サルベージ手術)

ステージIVやステージII/IIIで手術を希望ない患者さんには、この療法が行われます。欧米では、手術を前提として、化学放射線療法を行った後に手術を行うことが一般的で、今後、日本でも広がる可能性があります。

根治的化学放射線療法は、食道がんを化学放射線療法単独で治療しようという試みです。化学放射線療法が無効であった場合には手術をする(サルベージ手術)というオプションを付け加えると、手術療法にかなり近い成績があげられるという報告もあります。
成功すれば、そのまま食道が残る(臓器温存治療)という点で魅力的な治療法ですが、治療後長い時間が経ってからの合併症や、リンパ節転移診断の難しさ、治りきらなかったときの手術の難しさ、危険などの問題があり、十分な説明と理解が必要です。

食道がん手術の合併症と死亡率 合併症42%、死亡率3%

食道がんの手術後には、合併症として肺炎や縫合不全、反回神経麻痺(声帯麻痺)などが起こる可能性があります。

日本のNational Clinical Databaseの統計では、食道がん術後30日以内の死亡率は1.1%、周術期死亡率は3.1%です (Ohkura Y, et al. J Surg Oncol. 2019)。全合併症も42.6%と、まだまだリスクの高い手術です。

食道がんワンポイント 01

食道がん支持療法:食道がん周術期管理チーム

食道がん手術はリスクの高い手術のひとつです。そのため、食道がん患者に対し、多職種による周術期管理チームを結成し、術後合併症の軽減に努める病院があります。
外来を受診すると、禁酒・禁煙の指導、歯科医師による口腔内チェック・口腔ケア、耳鼻科医による嚥下機能・声帯運動評価を行います。手術決定後には、理学療法士によるリハビリテーション指導、薬剤師による持参薬の確認、管理栄養師による栄養状態チェックや体組成(骨格筋量や脂肪量等)のチェックなどを行います。手術の前から積極的にリハビリを開始することにより、食道がん術後に発生しやすい重大な合併症のひとつである肺炎の軽減につながっています。

食道がんの臨床試験

将来の食道がんに対する標準治療の確立や進歩を目指して、病院・医師の日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)などにより、多くの多施設共同研究が行われています。抗がん剤治療を積極的に行う臨床腫瘍科との協力や、新規抗がん剤や免疫チェックポイント阻害剤等の治験など、最先端治療も進められています。

食道がんの免疫療法

食道がんの治療では、3本柱である手術治療(内視鏡的治療〔ESD〕と外科手術)、化学療法(抗がん剤治療)と放射線治療以外にも、免疫療法の研究がさかんに行われています。なかでも免疫チェックポイント阻害薬の研究が進み、食道がんでも承認され始めています。
免疫細胞などの表面には、免疫作用を活性化・抑制する免疫チェックポイント分子があります。がん細胞もこれを持つため、互いに結合すると、免疫反応が抑制されて、がん細胞が増殖します。その結合を妨げるのが免疫チェックポイント阻害薬です。
食道がんでは、免疫チェックポイント分子の一つである免疫細胞のPD-1を、がん細胞のPD-L1と結合させないPD-1阻害薬(抗PD-1抗体)が承認されています(下図)。また、他のがんで承認されているPD-L1阻害薬、CTLA-4阻害薬も臨床研究が進み、今後承認される可能性が高いと考えられます。

免疫細胞:T細胞の働き
がん細胞がPD-L1を提示
抗PD-1抗体投与

食道がんはどのくらい治る?

転移・再発と生存率

1)食道がんの転移

転移とは、がん細胞が血液やリンパ液の流れに乗って別の臓器に移動し、そこで増大することです。
食道がんを外科的にすべて切除しても、すでにがん細胞が別の臓器に広がっている可能性があります。手術の段階で見つけられなかったがん細胞が、時間が経過してから転移として見つかることがあります。
食道がんの転移で多いのは、リンパ節、肺、肝臓や骨への転移です。症状は、転移部位によって異なります。

リンパ節、肺、肝臓や骨への転移

2)部位によって異なる転移の症状

肺や気管に転移した場合、長く続く咳や血痰、胸部の痛みなどが起こります。肝臓へ転移した場合には、腹部の張りなどを感じることがあります。また、へ転移した場合には、その転移した部位周辺に痛みを感じます。さらに、食道周囲の神経にがん細胞が浸潤すると、声がかすれる症状(嗄声)がみられます。

3)食道がんは3~5割に再発

再発とは、治療により目に見えないほど縮小させたがん細胞が、再び出現することです。最初の治療で完全に消失したように見えても、わずかに残っていたがん細胞が増殖して症状があらわれ、検査で発見された状態です。

4)再発時の治療は化学療法

再発した場合には、化学療法を行うことが一般的です。日本の食道がん根治手術後の再発は30~50%、欧米諸国では50%以上が報告されています。
再発の形式は、リンパ節、局所再発が20~70%、遠隔臓器転移が10~50%に生じ、両者が複合した再発も7~27%にみられています。
リンパ節再発は頸部、上縦隔が多く、遠隔臓器の再発は肺、肝、骨、脳の順に多いとされています。

5)再発後の生存率は低い

食道がん根治切除後に再発した場合の生存率は低く、再発診断時からの生存期間は5~10 カ月といわれています。ただ、長期生存や完治する症例が少なからずあることも報告されています。

6)再発は1年以内に発見される

食道がんの再発の多くは、初回の治療から1年以内に発見されるといわれています。この間は、特に注意して定期的に通院し検査を受けることが重要です。年数が経過するにつれて再発の可能性は低くなっていきます。

7)治療後は定期受診を!

治療後の定期受診は重要です。術後3年間は3~6カ月ごとに、術後3~5年は半年ごとCT検査、腹部エコー、腫瘍マーカー、内視鏡検査などを受けることが望ましいとされています。また、気になる症状が現れたときは、すぐに医療機関を受診することをお勧めします。

8)食道がんの生存率 ステージIVで約2割

食道がんの5年生存率は、ステージ0で約9割、Iで8割、IIで6割、IIIで4割、IVでは2割です。

食道がんワンポイント 02

5年生存率

診断から5年後に生存している比率です。多くのがんでは、治療でがんが消えて、5年経過後までに再発がない場合、「治癒」とみなします。

5年生存率

監修医師

監修医師:Dr. 上野 正紀

上野 正紀 Masaki Ueno

虎の門病院
専門分野:消化器外科(上部消化管)

専門医・認定医:
日本外科学会 専門医・指導医、日本消化器外科学会 専門医・指導医 消化器がん外科治療認定医、日本食道学会 食道科認定医・食道外科専門医・評議員・理事、日本内視鏡外科学会 評議員・技術認定取得者、日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医、日本消化器病学会 専門医・指導医、日本がん治療認定医機構 がん治療認定医、日本胸部外科学会 認定医・評議員

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


監修医師:Dr. 大倉 遊

大倉 遊 Yu Ohkura

虎の門病院
専門分野:上部消化器外科(食道・胃)

専門医・認定医:
日本外科学会 外科専門医、日本内視鏡外科学会 技術認定医 評議員、日本食道学会 食道科認定医、日本消化器外科学会 消化器外科専門医 消化器がん外科治療認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


監修医師:Dr. 下山 勇人

下山 勇人 Hayato Shimoyama

虎の門病院
専門分野:上部消化管

専門医・認定医:
外科専門医、腹部救急認定医、外科周術期感染管理認定医、ICD、食道科認定医、がん治療認定医、緩和ケア講習会受講済、Certificate of da Vinci System Training As a First Assistant、難病指定医、エピペン処方医、四段階注射法、NST教育セミナー受講済

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


監修医師:Dr. 矢後 彰一

矢後 彰一 Akikazu Yago

虎の門病院
専門分野:食道・胃外科

専門医・認定医:
日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本食道学会食道科認定医、がん治療認定医機構がん治療認定医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。

食道がんTOPへ戻る

この記事をSNSでシェアする