肺がん専門医師のセカンドオピニオンも

手術療法

3種類の「手術療法」
違いを理解するカギは「5」と「18」という数字

一般的に行われる手術療法は、「肺葉切除術」「肺区域切除術」「肺部分切除術」の3種類です。それぞれの違いは、切除の範囲にあります。その違いを理解するためには、肺の構造を知る必要があります。ポイントは、肺がいくつかの部分で構成されていることです。

1)肺は5つの「肺葉」、18の「区域」で構成されている

肺は左右に1個ずつあり、呼吸で吸い込まれた空気中の酸素を体内に取り入れ、不要になった二酸化炭素を体外に放出する「ガス交換」を行っています。

左右の肺は5つの「肺葉」に分かれています。それぞれの肺葉は「区域」と呼ばれる部分で構成されていて、両肺にある区域の数の合計は18です。

肺は左右対象ではなく、右側の肺は3つの肺葉に、左側は2つの肺葉に分かれています。肺葉よりも細かい「区域」の単位で両肺を見てみると、右側には10個の区域が、左側には8個の区域があります 。

2)切除の範囲は「区域」で考えるとわかりやすい

3つの手術法を切除範囲が小さい順に並べると、「肺部分切除術」「肺区域切除術」「肺葉切除術」の順番になります。

これまで、肺がんの標準的な手術は「肺葉切除術」でした。しかし最近では、早期に発見されるごく小さな肺がんも増えています。こうしたケースでは切除範囲を減らすために、「肺葉切除術」よりも切除範囲を縮小した「肺部分切除術」や「肺区域切除術」が行われることが多くなっています。

出典:日本胸部外科学会 Thoracic and cardiovascular surgery in Japan in 2016

では、3種類の手術で切除される範囲はどの程度なのでしょう? 「区域」の単位で見ていきたいと思います。

① 肺部分切除術

区域の一部分だけを切除するため、切除範囲は区域のサイズよりも小さくなります。

対象は、初期段階で見つかったサイズが小さい肺がんの場合です。健全な血管を残しつつ、がんとその周辺を切除する必要があります。さらに、空気漏れなどの合併症も防ぐ必要があるため難易度が高い手術です。

② 肺区域切除術

区域の単位で切除します。複数の区域を切除する場合もあるので、切除される区域は1~4個になります。

肺葉切除術と同様、対象になるのは、初期段階で見つかったサイズが小さい肺がんです。

③ 肺葉切除術

肺葉の単位で切除を行います。たとえば右上葉を切除する場合は3個の区域が、右下葉を切除する場合は5個の区域が切除されます。

肺がんの手術の標準的な術式で、肺葉の切除と同時に肺の周りにあるリンパ節を切除する「リンパ節郭清」も行います。

④ その他 一側肺全摘除術

片側の肺を全て切除するため、右肺を切除する場合は10個の区域が、左肺を切除する場合は8個の区域が切除されます。

呼吸機能の損失が大きいだけでなく、心臓にも負担がかかります。できる限り避ける方向で検討が進められていて、最近では、わずかな件数しか行われていません。

切除される区域の数で 失われる肺機能のメドがわかる

肺は18の区域で構成されています。そのため手術で切除した区域の数から、どの程度肺の機能が失われるか、メドを知ることができます。

失われる肺機能の割合(%)=切除する区域の数÷肺全体の区域数(18)×100

ただし、これはすべての区域の容積が等しいと仮定した場合の計算式です。実際は、各区域の容積は異なるので、あくまでもメドであることに注意する必要があります。

その上で、例えば「肺葉切除術」で右上葉を切除した場合、右上葉の区域数は3なので、失われる肺機能の割合は約17%(3÷18×100)です。一方「肺区域切除術」で1つの区域を切除すると、失われる肺機能の割合は約6%(1÷18×100)です。

手術の主流は「開胸手術」から「胸腔鏡手術」に

肺がんの手術には、「開胸手術」と「胸腔鏡手術」の2種類があります。以前は、開胸手術が主流でしたが、2016年の統計によると胸腔鏡手術の割合が68%となっています。現在では「胸腔鏡手術」が主流になっているのです。

さらに最近では、「胸腔鏡手術」の一種である「ロボット支援手術」も行われるようになっています。これは、医師がロボットアームを操作しながら胸腔鏡手術を行うやり方で、従来の胸腔鏡手術と比べ「難しい症例でも確実に手術を行える」などのメリットがあります

出典:日本胸部外科学会 Thoracic and cardiovascular surgery in Japan in 2016

1)開胸手術と胸腔鏡手術の比較

両者を比較すると次のようなメリットとデメリットがあります。

2)胸腔鏡手術と「ロボット支援手術」の比較

ロボット支援手術は胸腔鏡手術の一種です。従来の胸腔鏡手術とは異なり、ロボット支援手術では、医師がロボットアームを操作して手術を進めます。そのため、従来の胸腔鏡手術と比べると次のようなメリットがあります。

3)3) 「開胸手術」「胸腔鏡手術」「ロボット支援手術」それぞれの特徴

① 開胸手術

胸部の横側を切開して肋骨の隙間を開き、医師が胸の中に手を入れて手術を進めます。技術の進歩や手術方法の工夫によって、以前よりも手術創(手術によってできる傷)が小さくなりました。それでも内視鏡手術に比べると手術創は大きくなります。

② 胸腔鏡手術

内視鏡の一種である「胸腔鏡」を使用して行う手術です。2016年の統計によると、胸腔鏡手術の割合が68%で、現在では「胸腔鏡手術」が主流になっています。
胸腔鏡手術には、「完全胸腔鏡手術」と「胸腔鏡補助下手術」の2種類あります。基本的にはステージがⅠAまでの初期の肺がんに対して行われますが、条件が整えばⅠB以上の患者さんでも行われる場合があります。

●完全胸腔鏡手術

胸腔鏡を入れる穴(3センチ程度)を1個、鉗子を入れる穴(2センチ程度)を数個開けます。肺や血管の切除や縫合は、胸腔鏡の画像をモニターで見ながら、すべて鉗子を使って行います。鉗子の長さは20~30cm程度で、先端に組織をつまんだり、切除したり、縫合したりするための道具を装着します。

●胸腔鏡補助下手術

胸腔鏡を入れる穴(3センチ程度)を1つ開けます。それとは別に6~7cm程度の切開を行います。胸腔鏡で光を当てながら、切開した部分からも肺を直視しながら手術を進めます。

③ ロボット支援手術(ダヴィンチ手術)

胸腔鏡手術の一種であるロボット支援手術は、胸腔鏡手術を支援するために開発された医療用のロボット「ダヴィンチ(da Vinci)」を使って行われます。ロボットが自動的に手術をするのではなく、医師がロボットアームの先についた鉗子を操作しながら手術を進めます。

通常の内視鏡手術よりも、正確で細かい手術が可能になります。また、画像が3D化されているので、通常の胸腔鏡手術と比べると、医師は開胸手術に近い感覚で手術を行うことができます。

詳しい組織検査ができることも手術療法のメリット

手術療法によって取り出されたがんの組織は、手術終了後、詳しい検査が行われます。そのことで、がん細胞を切除せずに治療する「放射線療法」と比べると、次のようなメリットがあります。

1) がん組織の検査で、がんを確実に切除できたかを確認できる

手術療法で切除された組織は、「病理組織検査」と呼ばれる検査が行われます。病理組織検査では、顕微鏡を使って細胞や組織の状態を確認します。その結果、切除した組織の断端(肺から切り離した面)にがん細胞がないことが確認されれば、「がんがある部分がすべて切除できた」と判断できます。ちなみに、断端にがん細胞がない状態を「断端陰性」と呼びます。

逆に、断端にがん細胞が発見された場合は「断端陽性」と呼ばれます。この場合残っているがん細胞を叩くため、放射線療法または薬物療法を追加して行います。

そのほかにも、病理組織検査によって、肺がんの種類を示す「組織型」が正確に確認できます。「組織型」は、手術前にがんの一部を採取する「生検」によっても確認されますが、あくまで一部分を見た結果であり、全体を見ると違った結果になることもあります。一方、手術後の病理組織検査では、手術で切除した組織をすべて検査できるので、確実に「組織型」を判定できるのです。

2) 「リンパ節郭清」で、追加治療の必要性を判断できる

肺の周りにあるリンパ節は、がんが転移しやすい部分です。そのため「肺葉切除術」では、がんがある部分だけでなく、肺の周りのリンパ節も切除します。これによって転移の可能性が高い部分を切除できるだけでなく、合わせて、合わせて、追加治療の必要性も確認できます。

切除されたリンパ節は、切除されたがんの組織と一緒に「病理組織検査」が行われます。その結果リンパ節に転移があるとわかった場合、放射線療法または薬物療法を追加して行います。

リンパ節に転移がある場合、手術で切除した部分以外の場所に、CTなどの画像診断では確認できないほど小さながんが存在している可能性があると判断されます。そうした小さながんを死滅させるために、薬物療法を行うのです。

●「リンパ節廓清」を行うのは、確実に切除するため

リンパ節の切除は、「リンパ節郭清」と呼ばれる方法で行われます。これはリンパ節だけでなく、リンパ節の周りを覆っている脂肪も含めて切除する方法です。

脂肪も含めて切除する理由は、リンパ節だけを切除することを目指すと、誤ってリンパ節を傷つけ、がん組織を露出させてしまう可能性があるからです。そうなると、周辺にがん細胞が広がるリスクがあります。これを避けるために、リンパ節だけでなく脂肪も含めて切除する「リンパ節廓清」が行われているのです。

監修医師

小島 史嗣 Fumitsugu Kojima

聖路加国際病院
専門分野:呼吸器外科

専門医・認定医:
日本外科学会 専門医、日本呼吸器外科学会 専門医・認定ロボット手術プロクター、日本がん治療学会 認定医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


後藤 悌 Yasushi Goto

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院
専門分野:臨床腫瘍学

専門医・認定医:
日本内科学会認定内科医 総合内科専門医 指導医、日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 指導医、日本がん治療認定機構 がん治療認定医、日本呼吸器学会 呼吸器専門医 指導医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。

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