肺がん専門医師のセカンドオピニオンも

再発・転移

再発とは、手術療法や薬物療法、放射線療法で治療した後に、再度がんが現れることです。現れた場所が肺の内部や周辺のリンパ節である場合、「局所再発」と呼ばれます。一方、肺とは別の場所に発症した場合は「遠隔転移」と呼ばれ、「原発肺がん(最初に発生した肺がん)」とは異なる治療が行われます。両者の治療方針は、以下の通りです。

●「局所再発」の治療

手術が可能な場合は再度手術を行います。手術が難しい場合は放射線療法を行います。

●「遠隔転移」の治療

薬物療法が基本になります この先は、「遠隔転移」の治療法について説明します

「遠隔転移」の薬物療法

「遠隔転移」が起こりやすい臓器は脳や骨、肝臓などです。「遠隔転移」が発見された場合、見つかった場所以外にも小さながん細胞が広がっていると判断して、広がったがん細胞を叩くために薬物療法を行います。

1)遠隔転移の薬物療法の目的

目的は、QOL(生活の質)を保ち、できるだけ長くがんとの共存を目指すことです。これは、原発肺がん(最初に見つかった肺がん)に対して手術前・手術後に行われる薬物療法の目的とは異なります。原発肺がんで行われる薬物療法は完治を目指します。一方、遠隔転移の場合、広い範囲にがんが広がっているため完治が難しいことが多くなっています。そのため、進行をできるだけ遅らせ、QOLを保つことが目的となります。

薬物療法のほかにも、転移した部分のつらい症状を緩和するため、手術療法や放射線療法を行う場合もあります。どちらも根治をめざす治療ではなく、症状を緩和するための対症療法です。

2)遠隔転移の薬物療法は段階的に行われる

薬物療法は使用する薬剤を変えながら、段階的に行われます。初回の治療にあたる「一次療法」を行った後に再発や転移が見つかった場合、「一次療法」とは別の薬剤を使用して「二次療法」を行います。理由は、がん細胞には「薬剤耐性」と呼ばれる性質があるからです。「薬剤耐性」とは、治療の始めには効果があったにも関わらず、治療を続けていくうちにがん細胞が薬剤に対して耐性(抵抗性)をもつようになることです。

「遠隔転移」が見つかった場合、それまでに薬物療法を一度も行っていない患者さんは「一次療法」から治療を始めます。

一方、すでに「一次療法」を受けている患者さんは、「二次療法」からスタートします。「二次療法」を行って「薬剤耐性」が現れた場合、さらに使用する薬剤を変更して「三次療法」を行います。

脳転移の治療法

肺がんが脳に転移した場合の治療は、転移した場所の数によって治療法が異なります。ガンマナイフやハイパーナイフと呼ばれる、腫瘍の部分だけを狙った「定位放射線治療」が広く行われており、「全脳照射」は副作用を超えるメリットが得られる場合に限って行われるようになってきました。

1)転移の数が1個だけの場合

麻痺やめまい、頭痛、吐き気などの症状が強い場合は手術療法が検討されます。一方、緊急に対処するべき症状がない場合は、放射線療法のうち「定位放射線治療」が行われます。理由は、「定位放射線治療」は、他の放射線療法と比べると精度が高い治療が可能だからです。

2)転移の数が2個以上の場合

放射線療法が検討されます。実際の治療は、脳全体に放射線を照射する「全脳照射」と、転移がある部分にだけ照射する「定位放射線治療」があります。それぞれメリットとデメリットがあるため、患者さんの状態によって選択されます。場合によっては、両方を組み合わせて実施する場合もあります。

骨転移の治療

肺がんが骨に転移すると痛みが出るだけでなく、近くの神経を圧迫することでしびれや麻痺が起こる場合があります。また、骨折に至る場合もあるので、患者さんの状態に合わせて以下のような治療が行われます。

1)薬物療法

主に使用されるのは、痛み止め(消炎鎮痛剤、モルヒネなどの医療用麻薬、ステロイドなど)や、骨折や神経症状を予防する薬です。骨折や神経症状を予防する薬には、「ビスホスホネート製剤」や「デノスマブ」があります。 「ビスホスホネート製剤」や「デノスマブ」には、顎骨壊死や低カルシウム血症などの副作用があるため、注意しながら治療が行われます

顎骨壊死とは?
あごの骨(顎骨)が破壊されてしまうことです。症状としては歯肉の痛みや腫れ、歯がぐらつく、あごのしびれなどです。
口腔内の衛生状態が悪いと発生しやすいとされているので、薬物療法を行う前に歯科検査を受け、治療中は口腔内を清潔に保つことが大切です。また抜歯などの歯の治療によっても起こりやすいとされているので、薬物療法を開始する前に歯の治療を行うようにしましょう。投薬中に歯の治療をする場合は、主治医と歯科医に相談することが大切です。

2)放射線療法

骨転移がある部分に放射線を照射します。薬物療法で痛みが取れない場合、骨折のリスクが高い場合、神経が圧迫されて麻痺などの症状がある場合に行われます。

3)手術療法

手術療法は、次のような目的で行われることがあります。

・骨転移が原因で起こっている神経に対する圧迫を減らし、麻痺を軽減させる

・弱くなった骨を補強する

がん性胸膜炎

「がん性胸膜炎」は、肺がんが胸膜に転移して起こります。「がん性胸膜炎」が起こると、胸腔内にもともと存在している胸水の量が増えます。すると肺が圧迫されて胸が痛い、呼吸が困難になるなどの症状が現れます。

胸膜とは?
肺と胸壁の間にはスペースがあって、肺と胸壁の表面はそれぞれ膜で覆われています。この膜が「胸膜」です。肺がんが「胸膜」に転移して炎症が起きた状態が「がん性胸膜炎」で、炎症によって胸水の量が増えることで胸痛、呼吸困難などの症状が出ます。

「がん性胸膜炎」の治療には「胸腔ドレナージ」と「胸膜癒着術」の2種類があります。

1)胸腔ドレナージ

胸水を排出するために、胸腔内に管を挿入する方法で、入院して行います。入院期間は、たまっている胸水の量によって数日から数週間まで差があります。胸水が排出されて肺が広がったところで管を抜きますが、その前に「胸膜癒着術」を行う場合もあります。

2)胸膜癒着術

胸水がたまるスペースをなくすため、薬剤を使って胸膜を癒着させます。手順としては、最初に胸腔内に管を挿入して、その管を通して薬剤を注入します。

終了後に痛みや発熱がある場合は、解熱剤や鎮痛剤を使って対処します。

肺がんによる痛みは改善できる

肺がんが原因で起こる痛みを我慢すると、体力を消耗するだけでなく、気持ちまで落ち込み、生活の質が低下します。痛みは、痛み止めの薬を適切に使うことで改善できます。痛いと感じるときは、我慢せずに医師や看護師に伝えましょう。

1)痛み止めは、痛みの強さに合わせて用意されている

痛みの段階を3つのステップに分け、ステップ毎に使用する鎮痛剤が決められています。ステップ1に使用されるのは一般的な鎮痛剤と鎮痛補助剤です。ステップ2以降ではステップ1で使用される薬剤に加えて、「オピオイド鎮痛薬」と呼ばれる薬も合わせて使用されます。

2)オピオイド鎮痛薬とは?

オピオイド鎮痛薬は医療用麻薬と呼ばれ、痛みを改善する効果が強い薬です。「麻薬」という言葉を聞くと「怖い薬では」とイメージされるかもしれません。しかし医療用麻薬は、医師の指導のもとで正しく使用すれば、「使用をやめられなくなる」という依存性が生じることがほとんどないことがわかっています。

オピオイド鎮痛薬の主な副作用は、吐き気、便秘、眠気などです。いずれの症状にも対処法があるので、これらの症状がある場合は、我慢せずに医師や看護師に伝えてください。

緩和ケアを活用しよう!

「緩和ケアは進行したがんの患者さんが受けるもの」というイメージがあるかもしれません。しかし実際は、「緩和ケア」は肺がんと診断されたときから活用が可能です。

「緩和ケア」の対象は、からだや心のつらさだけではありません。社会的な苦痛も「緩和ケア」の対象になっています。例えば経済的な問題や、就労に関する悩み事などについても、相談したり、サポートを受けたりすることができます。

治療に前向きに取り組むためにも、また、療養生活の質を高めるためにも、「緩和ケア」をうまく活用しましょう。

1) 「緩和ケア」で緩和できる「つらさ」とは?

1.体に現れるつらい症状

痛み、吐き気、嘔吐、息苦しい、食欲がない、だるさなど

2.心のつらさ

気分が落ち込む、落ち着かない、治療や予後についての不安、孤独感など

心のつらさを感じているのは、患者さんだけでなくご家族も同じです。緩和ケアは患者さんだけでなく、ご家族も活用することができます。

3.社会的な問題

医療費の問題、退院後の就労、転院や自宅での療養についての不安など

2)「緩和ケア」は入院中にも、退院後にも受けられる

入院中には「緩和ケアチーム」によるケアを、退院後は「緩和ケア外来」によるケアを受けることができます。

●入院中

入院中の患者さんに対する緩和ケアは、医師や看護師、栄養士、薬剤師などによる「緩和ケアチーム」が担当します。「緩和ケアチーム」は、全国のがん診療連携拠点病院には必ず置かれています。また「がん診療連携拠点病院」以外の医療機関でも、「緩和ケアチーム」が置かれている場合があります。「緩和ケアチーム」は患者さんだけでなく、そのご家族もサポートします。

緩和ケアチームのメンバー

医師
体の症状を緩和する医師と精神症状を治療する医師が、主治医と協力しながら治療を進めます。

看護師
患者さんや家族のケア全般を担当するだけでなく、転院や退院後の療養の調整も行います。

薬剤師
患者さんや家族に薬物療法の説明や指導をします。また、医療者に専門的なアドバイスを行います。

医療ソーシャルワーカー
経済的問題や仕事や家族などの問題の解決、療養先の決定などをサポートします。

心理士
患者さんを心理的にサポートするため、カウンセリングや心理検査などを行うだけでなく、ご家族のケアも担当します。

栄養士
がんの進行や治療による栄養不良を防ぐため、食事の内容や食材、調理法を調整します。

理学療法士・作業療法士
リハビリテーションを通して患者さんの自立や、日常生活の維持をサポートします。

●退院後

退院後の緩和ケアは、「緩和ケア外来」が担当します。がんの治療が一段落しても、体のつらさや、心のつらさを感じることがあります。こうした苦痛を緩和するために、緩和ケア外来を活用できます。

監修医師

小島 史嗣 Fumitsugu Kojima

聖路加国際病院
専門分野:呼吸器外科

専門医・認定医:
日本外科学会 専門医、日本呼吸器外科学会 専門医・認定ロボット手術プロクター、日本がん治療学会 認定医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


後藤 悌 Yasushi Goto

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院
専門分野:臨床腫瘍学

専門医・認定医:
日本内科学会認定内科医 総合内科専門医 指導医、日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 指導医、日本がん治療認定機構 がん治療認定医、日本呼吸器学会 呼吸器専門医 指導医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。

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